2015-01-01から1年間の記事一覧
人工知能ブームの感があるけれど、こういう「かゆいところに手の届く」本が少ないなと感じていたので面白く読めた。この本は人工知能研究の歴史を第1次AIブーム、第2次AIブーム、そして現在の第3次AIブームと分けながら、その時代の人工知能の特徴(場合…
ぼくたちが何か行為をするとき、その行為は頭の中にある意図や動機、プランに従ってなされると考えるのが世の趨勢の見方だった。歩くためのプログラムが脳内にあって、それを実行することでぼくたちは歩いている、というようなイメージである。本書が提起す…
マーケット感覚とは、人びとが何に価値を感じているかを、実際の行動場面から見出す能力のことである。デザイン思考とか流行っていたし、これが大事だというのは耳にタコかもしれない。「JALの競合を考えよ」という課題があったとして、JALの事業を論理的に…
そこで、課題設定を「”アンプラグドケータイ”が実現した未来を思い浮かべて具体的な『利用シーン』を考えること」とし、アイデアの拡がりの可能性を残しながらもユーザーの心理や行動を想像せざるを得ない条件を設定した(87) 生意気に文句だけ言うのが得意…
P.139に経営学者Weickによる面白い主張が紹介されている。曰く、組織化とは複雑さの縮減であるのに対し、学習とは複雑さの拡大である、と。それゆえ組織化と学習のあいだには本質的な矛盾があるという。これを芸術に引きつけてみれば、学習とは様々な表現の…
「芸術を支援する」のは、「金銭面」以外の側面ではどのようなものがあったのだろうか。
パフォーマンス研究を確立させていった研究者のなかに、人類学ー特に口承文芸の人類学ーの流れがあったことは、実は当然のことであった。ヴィクター・ターナーの儀礼にせよ、リチャード・バウマンの口承文芸にせよ、それらは演劇の場合の脚本、音楽の場合の…
本書では第1の問いとして「熟達者は初心者とは質的に異なった課題表象が形成できるか」が挙げられている。音楽演奏における課題表象には、1.メタ認知的な目標表象、2.個々の楽曲についての対象表象である楽曲表象、3.楽曲表象を具体化するための戦略的…
プロフェッショナル―アマチュアの連続軸と、その軸を構成する概念の同定 隠れた音楽家たち: イングランドの町の音楽作り 作者: ルースフィネガン,Ruth Finnegan,湯川新 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 2011/10/31 メディア: 単行本 購入: 1人 クリ…
「認知科学で言われている現象(熟達化など)を、実践者の言葉で表現したい」 認知科学をレビューしてると言ったときに「あの芸術をいちばん面白くなくするやつね」と言われたこともありましたな。 https://twitter.com/vbear00/status/641984413237047296 h…
専門家は社会の中で不可欠な存在となっているのと同時に、彼らのもつ専門的な知識の有効性、社会の課題を解決できる能力への懐疑が高まっている。悪化する都市環境や貧困、環境問題といったトピックは、専門家の知識では太刀打ちできないように見える。それ…
カミュはこう言ったそうな。引用元は不明。カミュの『シーシュポスの神話』は芸術哲学の書でもあるそうだがそこに書いてあるのかしらん。 芸術家を助けることができるのは芸術を愛する人々だけだ(25) シーシュポスの神話 (新潮文庫) 作者: カミュ,清水徹 …
小泉恭子(2002)学校・教育・若者. 音楽教育学, 32(1): 1-10. 方法論としてのフィールドワークではなく、ある社会集団に独特な文化や規範を描きだすモノグラフとしてのエスノグラフィーの価値を、音楽教育学においても活かすべきだというレビュー。1970年代…
日本社会において芸術家であることは可能か。この問いに対して、わたしたちはそれがとても難しいことを示す多くのエビデンスをもっている。しかし、それと同時に、近代日本の歴史上、多くの芸術家(そこには"名もなき"、"隠れた"芸術家が多く含まれる)が存…
武知優子・森永康子 (2010) 職業的音楽家に向けての課題―音楽家を目指してきた若者の語りから―. 音楽教育学, 40(2): 13-24. ■ 背景 日本において音楽家を職業とするのは難しい。それは収入を得ることの難しさと、音楽大学ではスキルの教育はあってもキャリア…
情報学環の世界観って、こういうものだったのかと膝を打つ心地がした。 情報の定義について 情報を工学的に定義すると「2つの場合があって両者の出現確率が等しい(とみなされる)とき、どちらかが出現するかの伝達」(18)である。0か1のデジタルという…
芸術に関して本質的なことをやりたいという話はしていたが、どのような観点かは見つけられていなかった。デューイなどを読んでそう思っていたときは、芸術とは何か、芸術とはどういう活動かという、そういう問題かもしれないと思っていた。だが、最近の関心…
以下の本の著者。Oxford Handbook of Music Education所収。だいぶ前に見かけていたのにスルーしていたけど、自分がキャリア=生涯の中の学習という位置づけをするようになって、おそらく最重要文献の一つになるんじゃないかという気がする。 Musicians as L…
Roulston et al. (2015) Adult perspectives of learning musical instruments. International Journal of Music Education, 33(3): 325-335. インタビューして「perspective」を問う研究は多い。が、「こんな考えの人もいればこんな考えの人もいました」と…
Lave & Wenger が引いてあるくだりで、彼らの徒弟制の研究が becoming a midwife in Yucatan, Mexico and becoming a tailor in West Africa(p.16) を対象としていると書かれているのを見てはたと気づいたが、本書でも Lave & Wenger でも、learning の背…
ヴェブレン理論は、ファッションの経済現象としての側面を強調し、富を誇示するためのシステムとして定義する。そしてまた同時に、富と成功を見せびらかしたいという願望は、ひとおり優れていることを示したいという潜在的な欲望に もとづいているとされる。…
論文や研究の意義って何だ?(つぶやき) - モノ・コトの見かた by ”MARKETING_LOVER”d.hatena.ne.jp 「自分の関心はこれなので」話法をいつまでも使ってしまうと全く研究にならないのだ。既存の学問のベースに乗っかったうえで、問いの設定をしないと研究に…
ここ1週間ひさびさにちゃんと社会学やって気付いたけど、夏学期に認知心理学のレビューしたのは、その分野のことを全く知らなかったからであって、問いを認知心理学の枠内で立てなきゃいけないわけではないのだった。社会学や人類学的に学習を扱う可能性に意…
北田暁大「社会学的忘却の起源」 つまり、激しい社会変動におけるマイノリティの社会的・共同生活を描き出す説明概念から、テストによって測定されることにより個人に帰属される理論的構成概念へと、態度概念は脱社会化していく。これは明確なひとつの「社会…
わたしは知識人として、聴衆あるいは支援者の前で自分の関心事を披露するわけだが、ここには、わたしがいかにして自分の論点を明確にするのかという問題のみならず、わたし自身が、自由と公正という理念を促進支援しようとする人間として、何を表象(レプリ…
Sociology of Leisure の大家である R. A. Stebbins の議論を抑えていないのはまずかった。Gates の路線を深化させるためにも。 Biography of Robert A. Stebbinswww.seriousleisure.net ”From dabbler to serious amateur musician and beyond: Clarifying …
一つの経験、統一体こそが美的であるという話。人間が生命であるという出発点から、経験の美的性質とは、環境との相互作用において混乱や葛藤を経ながら、「動きながら安定しているという均衡」(p.14)にあると、デューイは主張する。その状態では、「過去…
パフォーマンスに関する定義を引いていくと、その本質的な部分はSchechnerによる「することを見せること showing doing」に行きあたる。「一般的には美学的で、高い技量を伴うコミュニケーションの様態であり、特別なフレームを用いて観客に提示されるもの」…
パフォーマンスによる自己の省察と、日常から区別されたフレーム。ある種の独特なフレームが要求される状況の存在(それが「非日常」とカテゴリー化されているかはともかく)が、逆に日常や自己の存在を逆照射する。 ・ターナーはさらに、「ヒトにとってパフ…
公演や発表会の場で、舞台にあがってパフォーマンスすることが、その人にとってどんな経験をもつのか。という点に関心がある。特に、それがアマチュアによるパフォーマンスならば、なおさらだ。パフォーマンスを職業にしている人にとっての舞台の経験と、ア…