足跡

@vbear00のメモ

OECD(2005=2014)『創造的地域づくりと文化』

要約を読んだ限り、ここで文化の効用として述べられていることは、差異の創出・イノベーションか、あるいは社会関係資本の蓄積につながるということである。差異の創出は、創造都市や観光などの議論向きである。そうした文化とは、地域に固有の文化、他の地域にはない、魅力的なもの、がイメージされている。

日本における普通の文化活動について考えてみると、差異化などが目指されているわけではないし、地域固有と呼べはしないものが大半だろう。合唱に関して言えば、合唱連盟を中心とした階層構造が存在し、コンクールに向けて全国一律の合唱活動が展開されているのが現状である。こうした意味での文化活動は、創造都市や観光の議論にはとても合ったものではない。そうすると、政策的な根拠に落とし込むためには、やはり社会関係資本を持ち出すことになるのか。それとも、『地元の文化力』よろしく、あえて差異化している事例をがんばって見つけることになるのか。

『学習の本質』同様、Evidence Based Policy を遂行していくための論点がまとめられている。日経朝刊2月13日の経済教室「『根拠』に基づく成長戦略
教育政策遅れ際立つ 乾友彦 学習院大学教授 中室牧子 慶応義塾大学准教授」

http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150213&ng=DGKKZO83098920S5A210C1KE8000)などを見てみても、根拠、政策に役立てる学問的知見の必要性が問われている。教育政策などに関しては、社会学が貢献できることは多いだろう(そういえば福祉政策も、だ)。自分も、文化政策のための Evidence を提供したいという思いもある。そうならば、やるべきことはいろいろあって、1.文化政策学における Evidence のレビュー、2.評価手法などの統計運用力のトレーニング、3.事例選択は単純な市民活動というよりは政策との議論の回路を用意できるものを意識的に探す、といったToDoが挙げられる。特に、事例選択の問題は、かなり意識的に探さないといけない。市民参加型舞台みたいなプログラムをとった方が、説明はしやすいのだが…。文化政策もそうだが、むしろ教育、生涯教育と政策・エビデンスという観点から攻めた方が道は開けるかもしれない。

 

 

 

 

「地元」の文化力: 地域の未来のつくりかた (河出ブックス)

「地元」の文化力: 地域の未来のつくりかた (河出ブックス)

 

 

政策志向の社会学

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研究活用の政策学――社会研究とエビデンス

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