Danziger(1994=2005)『心を名づけること』
第7章 動機づけとパーソナリティ
行動を観察し研究するプログラムとしてディシプリンを築いてきた心理学は、行動を因果的に説明する概念として動機づけを用いるようになった。動機という言葉自体、20世紀になって爆発的に用いられるようになったものである。行動の因果的説明が求められた原因には、第1次大戦後の精神分析の大衆的な流行と、教育や産業の分野で人々のパフォーマンスを制御するという工学的要請があった。
動機づけは、操作や誘導の対象となりうる範囲内で共通している一連の用語をまとめるものである。動機づけは、「エネルギー」のメタファーによって成立している概念だ。すなわち、筋肉とそれを収縮させる刺激によってエネルギーが発生するように、精神と動機づけによって行動が発生すると考えられた。「動機づけ」なるものがあるという仮定は、生物学や生理学をメタファーによって転移させることによって、存在が可能になっている。しだいに、生物学とのつながりは影をひそめていくが、その代わりに、ある時代に見られる文化的慣習を、人間一般に普遍化するという方法がとられるようになる。
パーソナリティに関して、「この実体を探求するときに好まれた方法は、言語による記述に完全に頼っていた」という記述がされている(p.36)。言語が世界を反映していることは大前提として置かれていた。パーソナリティに限らず、動機づけにおいても、やはりこの問題は避けて通れない。動機の語彙の問題は、やはり問題であって、うまく解決されているのかはまだ分からない。
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