足跡

@vbear00のメモ

『Harvard Business Review 2015年3号 特集=オフィスの生産性』

ビジネス・経営の分野は、アカデミズムと民間が協働で、ひとつのプロジェクトに向かって知識の集積を目指している感じがしてうらやましいと感じる。

  • Ben Waber(MITメディアラボ研究員, ソシオメトリックソリューションズCEO)のソシオメトリック・バッジや、矢野和男(東工大連携教授, 日立製作所)のハピネスメーターのように、組織行動やコミュニケーションのデータを個人ごとにリアルタイムで計測するウェアラブル・デバイスが登場していて、ワークプレース研究に用いられている
  • なんでもかんでもオープンにしたら良いという風潮はすぎ、状況や組織改善の目的に応じた空間・コミュニケーションのデザインが求められている
  • イノベーションの創出には、開放性・柔軟性が役にたつ一方で、試行錯誤や生産性のためには(チームごとの)閉鎖性・固定性が役目を果たす
  • インターネットやモバイルデバイスを通じたコミュニケーションが一般化したため、オープン/クローズドやプライバシーといった概念も、単純に身体的なもの以上として捉えなければならない

だからミュージシャンは観客の前で演奏するが、練習するのは観客がいない時なのだ。楽器に触れながら新しい何かを探り当てるには、プライバシーが必要である。したがって、どの程度の透明性―ひいては監督―が適切かは、業務内容と観察者によって決まる。ミュージシャンは指導者の前で練習するかもしれない。ただし、その指導者はみずからが指導を乞うた人物であり、お金を払って演奏を見に来た観客ではない。テクノロジーのかがで大勢の観客がどれほどつぶさに演奏を鑑賞できるようになったかは、テイラーが想像もしなかったほどだ。

さらに、明確な決定権が観客にあるとすれば、監視効果はいっそう高まる。大勢の観客の前でスポットライトが当たっている状態で、業績基準に縛られながら、練習も積まずに何かを改善することなど是が非でもやりたくないだろう。そのような透明性にさらされたら、「リハーサル中」という札を下げて閉ざしているドアの内側に逃げ込みたくなるだけだ。

これらのすべて心得ている組織は「余白」(余剰資源)を減らすよりも、これを生産的なものとして活用すべく、従業員を完全な透明性から解放している。

p.71 Ethan Bernstein "The Transparency Trap"

組織的な舞台芸術活動だと、指導者=監督者は必ずしも自分が選んだ人とは限らないし、ほかのメンバーの存在があるために、試行錯誤のためのプライバシーが保たれているとも言えない状況があるんじゃないか(と自分の経験上)思った。舞台芸術の練習って、半分、本番の舞台みたいなところがあるんだよな。その辺の心理は、例えば『マエストロ』のオーケストラの練習風景にも表れている。

 

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職場の人間科学: ビッグデータで考える「理想の働き方」

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