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@vbear00のメモ

Rosewall(2014) Arts Management

Rosewall の Arts Managemnt は、芸術組織の経営の問題を中心的に扱っていて、しかも、芸術組織による教育という項目がある。


芸術組織による教育

人は生涯を通じて、芸術とさまざまな出会い方をする。少し例を挙げると次のようなことがある。

・芸術が、職業や趣味、楽しい気晴らしになる
・芸術が、新しい経験やアイデアへの入り口になる
・芸術が、あらゆる年齢の人々が創造的に自己表現する機会をもたらす
・芸術が、社会的、宗教的、市民的活動の一部となる

非営利の芸術活動からすれば、芸術教育は、教育委員会による定義よりもより広い意味をもつ。人々は、ライフステージや発達段階のあらゆる時期に、芸術がもたらす利益とさまざまな出会い方をする。それゆえ芸術組織にとっては、教育機会の提供をミッションの重要な部分に位置づけ、芸術との多様な関わり方を促進することがふつうである。多くの組織は、教育プログラムに対してかなりのリソースをつぎ込む。
 芸術組織によって提供される教育活動は、組織によってさまざまに異なっている。参加型の活動(土曜日の朝に行われる詩のクラス)、フィールドトリップ(学校の生徒をアートセンターに引率する)、エンリッチメント(大人向けのアフタートーク post-pefromance discussion)などの例がある。
 教育プログラムの中には、コミュニティが抱える社会問題を対処するための方法を教えるものもある。放課後プログラムや若者向けプログラムは、生徒の放課後のケアや、肯定的な動機づけ(positive reinforcement)、果てはリスクをもった若者の就労プログラムまでをもたらす。
 多くの芸術組織は、教育プログラムが未来のオーディエンスを育てる役割があることも認識している。多くの研究が教育と芸術への参加のあいだにある強い結びつきを指摘しており、それを受けて芸術組織も、芸術についてより学ぶ機会を提供することによって、子供たちや大人が芸術をもっと楽しみ、多くの芸術経験をすると考えている。さらに、芸術組織は、学校内外での芸術教育に対してより支援がされることを主張している。子どもたちや若者に芸術活動に参加する楽しみをもたらす非営利の芸術組織は、彼らが生涯を通じて芸術のサポーターとなってくれることを期待しているのである。
 より多くのことを学べば、芸術経験はより深く、豊かになるという予測からも、芸術組織における教育プログラムは根拠づけられている。演劇の出演者とのアフタートークに参加する人は、受動的な観客から能動的な参加者へと変わっていくだろう。同様に、ミュージアムを訪れるまえに美術史の講義を探して受講するような人は、鑑賞経験をより豊かにすることができるだろう。
 あらゆる年代の人々にとって、教育経験は、ほかの芸術愛好家と交流したり、新しい経験をしたり、創造的な表現力を養ったりすることを可能にする。

(p.193-194)

Arts Management: Uniting Arts and Audiences in the 21st Century

Arts Management: Uniting Arts and Audiences in the 21st Century