足跡

@vbear00のメモ

Cohen (1991) Rock Culture in Liverpool

洋書、外国語論文は、メモ取らないと大変。逆にとっておくと、あとで読み返すのが非常に楽になる。メモないと、どこに何が書いてあったのか、すぐ検索できない。

本書は、リヴァプールのロック・シーンに関するモノグラフ。著者のサラ・コーエンはリヴァプール大学音楽学部の教授(http://www.liv.ac.uk/music/staff/sara-cohen/)。音楽と都市の関係について研究している。リヴァプールは非常にロックバンドが多い都市であり、失業率の高さもあいまって、職にあぶれた若者たちが自らをアイデンティファイするためにバンドを組んでいる。

Rock Culture in Liverpool: Popular Music in the Making

Rock Culture in Liverpool: Popular Music in the Making

 
  • 第1章 シーンと登場人物 scene and personae
  • 第2章 集合的創造性 collective creativity
  • 第3章 バンドの組織とマネジメント organization and management of bands
  • 第4章 ギグ the gig
  • 第5章 取引 [?] the deal
  • 第6章 音楽が生み出されるとき [?] music in the making
  • 第7章 音楽における様式と意味 style and meaning in music
  • 第8章 女性という脅威 the threat of women

第1章 シーンと登場人物

リヴァプールはもともと港町として栄えた地である。それゆえ船乗りの気質があり、平等主義と男らしさがイメージとして付与される。そこから、攻撃的で反抗的な「リヴァプール人」という像が、外部からも、内部からも構築されている。同時に、リヴァプールへの強い忠誠も生じている。

リヴァプールを含むマージ―サイド州では、音楽が文化的生活の重要要素を占めていて、音楽堂やキャバレー、アイリッシュフォークといった様式を生み出している。港町ゆえの外向き気質は、船乗りを通してアメリカの文化的トレンドを受け入れることにもつながった。1950年代のスキッフルを経て、ロックは、まず若者ギャングの「トーテム」としてリヴァプールに根付いていく。それに応じて、1960年代にはティーンエイジの「ビート」クラブやキャバレーの急速な増加を見るが、バンドの増加も著しく、次から次へと出演者が交代していくほどだった。ビートルズもこの時代に活動している。リヴァプールの音楽シーンは、1970~1980年代のパンク・ムーブメントの際に再び活性化する。

現在リヴァプールで活動しているバンドの多くが、20~30代の白人男性で構成されている。ジェンダーの問題、あるいは黒人への人種差別問題が背景にある。バンドマンである若者は、音楽シーンから縁をきるのは難しいと考えていて、バンドを続けながらも、キャバレーやセッションの仕事を受けたり、プロダクションやエンジニアリング、マネジメントや音楽教育に移行していく。リヴァプールには、バンド間の競争と、バンド内での連帯や協調の両面が見られる。

いずれにせよ、リヴァプールのロック・シーンは、その都市ならではの特徴に大きく影響されている。