宝月誠(2010)「事例研究から仮説構成の可能性」
方法論。シカゴ学派系の、質的調査から仮説構成していく方法論のまとめ。しかしこうして方法論を調べるにつれ、自分が卒論でやったことの不十分さが突きつけられてつらい。
- ブルーマーの自然主義的探求:経験的世界のあらゆる資料を集め、事実に基づいて語る。仮説は経験的世界との一致によって検証される。
- ズナニエツキ、クレッシーの分析的帰納法:事例から帰納的に仮説を構成していくが、否定的事例によって絶えず比較を行い、妥当な仮説に精緻化してく。必要条件を明確にしてく試み。
- ストラウスとグレイザーのグラウンデッド・セオリー:事例から得たデータのコード化によってカテゴリーをつくっていき、そのカテゴリーの範囲をさらに増やしていくようにして、理論的サンプリングを行っていく。分析的帰納法よりも、方法論としての側面がより強い。
- ブラヴォイの拡大事例法:事例の外部にある構造や社会的圧力に注目し、既存理論が試される場として事例を扱う。
- ベッカーの『社会学の技法』:研究者の認識枠組みや概念の重要性を指摘。方法論としてはグラウンデッド・セオリーや分析的帰納法などを参照している。
この論文では分析的帰納法は「仮説を精緻化して狭めていく」技法であるため、グラウンデッド・セオリーのような創発性がないかのような扱いを受けている。とはいえこれは明らかにQCAにもつながる手法であり、否定的事例をもとにあらゆる可能性を探るというかたちで、データの可能性を「広げていく」手法にすることもできる。たぶんベッカーはそういう風に評価しているはず。
結局のところ、得られたデータから言えることは何か、絶えず比較軸をつくっていくなかであらゆる可能性を考えていくことが重要なんでしょう。
- 作者: ハワード S.ベッカー,進藤雄三,宝月誠
- 出版社/メーカー: 恒星社厚生閣
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