足跡

@vbear00のメモ

松尾(2015)人工知能は人間を超えるか

人工知能ブームの感があるけれど、こういう「かゆいところに手の届く」本が少ないなと感じていたので面白く読めた。この本は人工知能研究の歴史を第1次AIブーム、第2次AIブーム、そして現在の第3次AIブームと分けながら、その時代の人工知能の特徴(場合分けと探索の時代から、エキスパートシステムへ、みたな)と、それがいかなる領域で実装されてきたのかが書かれている。昨今よく耳にする「ディープラーニング」が、なぜ画期的なのかも説明されている。理工系の棚に並んでいる「人工知能概論」みたいな本は、基本的に技術的な説明が中心で、「どうやって人類は人工知能を研究開発しようとしてきたのか」という歴史的な説明は、冒頭で軽く触れるだけの印象があった。本書を読めばそういう「人工知能業界」の事情=かゆいところ、も(ほんのさわりだろうけど)知ることができる。人工知能にとっては、専門的な知識よりも、人びとの常識的な知識を扱うことが難しかったこと、膨大な情報に取り囲まれているにも関わらず、日常的にぼくたちは必要な事柄・意味ある事柄だけを難なく抽出し、関連付けて生活しているところが鍵だったというのは興味深い話である。社会学やっている人なら、「エスノメソドロジーってそこに取り組んでいたのか」と気づくポイントである。最終的な議論の争点は、人間の専売特許だった「学習」を人工知能も担えるようになると、社会にどんなインパクトがあるのだろうという話になってくる。現在進行形の出来事であり、答えはまだない。これは、ふだん自分がどのように生活し、働き、学習しているのかを省みないとできないだけに、「人工知能を知ることは、人間を知ることだ。」という帯の文句は、まさしくだ、と思う。