足跡

@vbear00のメモ

Learning by showing

 パフォーマンスに関する定義を引いていくと、その本質的な部分はSchechnerによる「することを見せること showing doing」に行きあたる。「一般的には美学的で、高い技量を伴うコミュニケーションの様態であり、特別なフレームを用いて観客に提示されるもの」(Bauman 1977: 42)、「これらの芸術は、練習を積んできたりスキルをもったりした人々の身体的な存在を要求する。彼らのスキルの実演がパフォーマンスである」(Carlson 2007[1996]: 71)、などの舞台芸術の定義を見ても、スキルと同時に、観客に対して見せることが基本要件とされている。

 パフォーマンスと学習をテーマにするとき、その根幹部になるのは「Learning by showing 見せることで学ぶ」になるのではないか。「Learning by doing 為すことによって学ぶ」あるいは「Learning by creating 創ることで学ぶ」ということは、経験主義的、構築主義的な学習論において主張されてきた。これらのフレーズをもじって、パフォーマンスにおいては、自らの活動や身体動作を人に提示することが重要な経験と考え、「Learning by showing」を提示できるのではないかと思う。

 問題は、この考えを、どうやって先行研究や分野の中に位置づけたら良いのかということで、いまは認知科学でパフォーマンスを扱った研究を見ているが、どうにも接続できない。なにせ「練習」の場面を細かに分析したものばかりなので、人に見せるという活動に注目したものがないのだ。一方で、ゴフマンの影響を受けた自己呈示論は、AuslanderやSmallを見ても、実証性に欠けるきらいがある。社会科学的な実証主義のスタイルでこうした問題を扱いたいと思っているが、ロールモデルが今のところ見つけられない。人文学的な記述、演劇論のようなものは見つけることができるだろうが…。